2002年 09月 28日
人体模型の夜/中島らも |
人体模型の夜
中島 らも / 集英社
スコア選択: ★★★
階段(の先の暗闇)
迷路(で迷うこと)
砂漠(で迷うこと)
この3つが、田辺聖子が考える「人間を戦慄させるもの」だという(中島らも「人体模型の夜」あとがきから)。
この頃、「Gocoo」という太鼓集団の楽曲を聴きながら道を歩くのだけど、無性に目をつぶって歩きたい衝動にかられる。
実際、目をつぶって歩いてみると、どれだけ自分の平衡感覚を信じて歩みを進めてみても、10歩を過ぎた頃になると、どうしようもない恐怖心に掴まってしまう。そして、20歩に至らずに目を開けてしまうのだ。
何度繰り返しても同じ結果になる。17歩、18歩、19歩、もうダメだ! である。どうしても20歩の壁を越えることができない。
この恐怖心とは、ものにぶつかるかもしれない、というのはもちろんなのだけど、自分が実は、目的とは別の場所、異世界へ進んでいるかもしれない、という恐怖である。
その恐怖の絶頂で目を開けてみて、そこが自分が見知った世界であることに安心するのだ。
思えば、子どもの頃は一事が万事こういう感覚だったように思う。
中島らもの「人体模型の夜」は傑作だ。12編の短編に、そうした異界への入口を周到に配置し、読み手をズルズルと引きずり込んでいく。引きずり込まれた読み手はあわてて本を閉じ、顔を上げたその場所が自分の見知った場所であることを確認してホッとするのだ。
(実は、自分が見知った世界ではなくなっているかもしれないのだが)
ともかく、この人の才能はとんでもないですな。
中島 らも / 集英社
スコア選択: ★★★
階段(の先の暗闇)
迷路(で迷うこと)
砂漠(で迷うこと)
この3つが、田辺聖子が考える「人間を戦慄させるもの」だという(中島らも「人体模型の夜」あとがきから)。
この頃、「Gocoo」という太鼓集団の楽曲を聴きながら道を歩くのだけど、無性に目をつぶって歩きたい衝動にかられる。
実際、目をつぶって歩いてみると、どれだけ自分の平衡感覚を信じて歩みを進めてみても、10歩を過ぎた頃になると、どうしようもない恐怖心に掴まってしまう。そして、20歩に至らずに目を開けてしまうのだ。
何度繰り返しても同じ結果になる。17歩、18歩、19歩、もうダメだ! である。どうしても20歩の壁を越えることができない。
この恐怖心とは、ものにぶつかるかもしれない、というのはもちろんなのだけど、自分が実は、目的とは別の場所、異世界へ進んでいるかもしれない、という恐怖である。
その恐怖の絶頂で目を開けてみて、そこが自分が見知った世界であることに安心するのだ。
思えば、子どもの頃は一事が万事こういう感覚だったように思う。
中島らもの「人体模型の夜」は傑作だ。12編の短編に、そうした異界への入口を周到に配置し、読み手をズルズルと引きずり込んでいく。引きずり込まれた読み手はあわてて本を閉じ、顔を上げたその場所が自分の見知った場所であることを確認してホッとするのだ。
(実は、自分が見知った世界ではなくなっているかもしれないのだが)
ともかく、この人の才能はとんでもないですな。
by tiptopstudio
| 2002-09-28 20:48
| Books